1999 GAO1月号
ライ 第104話


年も押し迫り、例の年末のイベントの準備やら、単行本のチェックやらでスケジュールがキチキチだ。しかもあの原稿紛失時件の始末は まだ正式に付いてないと来た。色々ゴタゴタ続きのライ製作ニュースだが、まずは今月より前回で書いてた通り、担当替えがあった。毎回、 このニュースを色んな意味で賑わした前担当の佐藤氏に替わって、新人の安藤氏がやってきたのだ。新人と言っても途中入社という形で、 以前はよくは知らないがアダルト劇画系の会社からやってきたそうだ。まだまだ未知数の人だが、真鍋譲治の担当は相当、神経が図太くな くてはならない。果たしてどのくらい耐えれるだろうか。あの無能小僧のA川以来、一年足らずの担当が多い中、健闘を祈るのみである。 しかしまぁ、こうコロコロ担当が替わるのは考え物だな。性格悪い古株作家を担当する難儀さは皆で平等に分かち合おうという事かな。 その昔、古代共和制ローマの最高官である執政官は一年で交代だったが、その制度故にハンニバルにコテンコテンにやられてしまったぞ。話が あさっての方に行ってしまったが、要は継続は力なりと言うことだろう。やっぱり2,3年は付き合ってくれなくては、ライの神髄は理解 できないよ。最も単に原稿取りに来るだけの担当なら構わないけど..この期に及んで今更担当と打ち合わせることなんか無いもんな。

と言うわけで104話目だ。今回は32P、ドラクーンやプレジデント.ライラの進行が及ぼす影響を心配した編集部がページを減らし てくれたんだけど、本当は俺、ここらで一回休みを貰おうと思ってたんだよな。何回も前担当にお願いしてたのに、さあ、取りかかろう かという時点で編集長が「今月休みますか」って聞いて来るんだぜ。おいおいそれじゃ落としたのと同じだろ!俺、もし休むんなら前号に お断り入れとくぜ。まぁいいか、そんなこと。話は変わるけどGAOの予告って変だね〜。わざわざ隅の方に「掲載時と予告が多少違うか も知れません」って書いてるぜ。変なの。これって予告にはあるけど落ちてるかも知れませんよって事なんだね。何だか消極的お断りって 感じで涙を誘うね。

104話目は丸々南天の話だ。お気付きの方もいるかも知れないけど、ここ最近、雷から見た天下取りというよりも、天下、つまり雷と敵 対し消えゆく側から雷という人物を描く手法に変えている。何故かというと雷には皇帝になった後のエピローグはない。死んだ後,後世、ど のように評価されたかも書かないつもりだ。なれば支配されていく側の雷の人物像も必要だと思ってね。天下統一という名の下に戦争を仕 掛け、領土を拡張していく男、味方から見たらこれ程頼もしい人物は居ないかも知れないが、敵対する側からは不倶戴天の敵となる。天下 が一つにまとまれば越したことはないし、それは天下万民が望んでいるだろう。が、その方法が力による併合しかないとなれば、その理想 の世界を作ると言うことは、凄まじい血が流されると言うことだ。皆が望んでる目標のために血を流さなくては成らない者達、そちら側か ら見た征服者の姿である。

諸手をあげて併合を望む者はないだろう。もしくは併合されても何らかの条件付き..例えば形式的にでも自分の基盤を残せないか..こ ういう条件闘争がこの後のライの話の中心になる。南天の中でも良識派である龍緒や壮大な迎撃戦略を立てている姜子昌などもその心の中 では、すでに五丈による天下統一は既成事実となろうとしているのだ。ただ、統一の時期、どのような形での統一か、そして統一後にどの ような支配形態が出現するのかが彼らの中でも未知の要素であり、それ故、その未知の要素を有利なものにしたいと、苦心しているのであ る。もっとも羅候はそうとは思っていないが..

さて、冒頭は姜子昌、飛竜のいわゆる浅からぬ関係の二人の再開である。ここでは二人にこれからどうするなどと語らさない。只々、 一度、袂を分かった男女の再開だけを描きたかった。飛竜の「あたしには何もできなかった」と言う叫びは正直な思いだし、その飛竜に 対して決して同情じゃない慰めの言葉をかけた姜子昌も心の底からそう思ったのに違いない。あの数ページだけは戦略も謀略もない二人の 男女の会話にしたかったんだが、どうだっただろうか?

姜子昌と飛竜のシーンの最後に「我々は月のようなもの、その光で闇夜を照らす。だが、太陽を失えば月光も忽ち輝きを失うのか..」て のがあるがまさしく飛竜の、いや、師真や骸延など多くの軍師と呼ばれた人間の宿命だろう。姜子昌が、師真がどうなるかはこれからだけ どね。

怒ってます、羅候。彼としては和睦は勝って結ぶ物であり、負けて結ぶは降伏と対して変わらないだろうから、羅候の怒りは相当理解できる。 ましてやまだまだ南天は戦えます、と言った宰相から言われたら頭に血が上るわな。龍緒としては再び勝つ望みが少なく、多くの南天諸部族が 離反している今、国力が残っているうちに何とか南天の存続を既成事実にしたい一心で言ったことなんだけど、現実認識力にやや欠けている羅 候には理解できなかったようだ。龍緒も羅候を奮起させることもあって南天の戦力はまだまだ戦えますなんて言っちゃってるから、どうしても 和睦の理由に交易の利潤や人心の疲弊なんかを持ってこなくちゃならなかったんだろう。そんな理由じゃ羅候が納得する訳ないよな。ここで出 てきた「一天両帝南北朝」てのはその昔、足利尊氏と後醍醐天皇が対立してた頃の政治形態から拝借。確かに天下を二分して南北の交易を盛ん にすれば併合するよりずっと、利益をもたらし現実的かも知れない。けど銀河は以前は統一されていたのだ。自分を過去の支配者の比べて劣っ てるとは微塵とも思っていない雷、羅候の両名にとって現実的だろうが何だろうが受け入れられないと言うことなのだ。

いよいよ、英真が羅候を直接、説得と言うことになるが羅候はその口すら開かせない。拷問だ。以外と棒とかで殴られてるシーンは難しい。も っと残虐にもしたかったんだけど(例えば爪を剥ぐとか..)32Pしかないのにそればっかりじゃ漫画が荒んじゃうよね。どっちにしろ英真 、龍緒共に専制君主の典型である羅候の説得に失敗してしまった。どちらも少し話の持って行き方を急ぎすぎたのだろう。俗に言う根回しを充 分したとは言えないわな。龍緒としても羅候は自分の言葉には必ず耳を傾けてくれると、過剰の思いこみがあったのかも知れないし、何と言っ てももっと踏み込んで羅候に南天の現実を知らせるべきだったんだろう。現実認識力がやや乏しいかも知れない羅候だが、彼も一国の主、事実 を隠さず正直にその鼻先に突きつければ、十分理解できたはずだしそうでなければ王の名は語れまい。後はその性急な性格とプライドを上手く 柔和させつつ名誉ある和睦に持って行ければ..やはり人を説得するというのは難しいことですな。

今回の仕事ではアシストのモリーンはバイクで事故って骨折するは、チーフの山下は後半、風邪にやられてひっくり返るはでムチャクチャでした。


この仕事が終わった後、編集部に「原稿紛失の後始末はどうなったの?今月中にちゃんと報告してよ」と安藤氏に言ったら、しばらくして部長 の加藤氏からですという手紙を持ってきた。内容は処分内容(原稿紛失に関する該当社員のペナルティ)は社外に出せないことになっています、 今年のボーナスが減っていたのもその処分の一巻だと思います、という実に鼻をくくったお返事だった。うわっ何これ!?前回はちゃんと辞令の コピーを寄こしたじゃねぇか!どこぞの官僚かい、この返事は! くそったれが、今回は紛失ページ数が少ないからここら辺でお茶を濁そうと 思ったのかよ!それとも前回はアニメも決まったところなんで、ここでへそを曲げられたらマズイと思ってひたすら下手に出たのか。一読した なり手紙を破り捨てた俺は安藤氏を怒鳴りつけて編集長に電話した。「なんやねん、これは。社長を出せ!」 ということで来月社長と直談判
結果は来月の製作日記第105話で詳しく..




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