1999 GAO10月号 ライ 第112話 前回に続いて斉王都周辺の話がハードな展開を続ける。今回はライも出番無し、斉王都を守る親爺達の 物語だ。特に孟閣が大活躍、一気に彼の株が上がった様だぞ。 出足は混乱極める斉王都首脳陣の話だ。こーいう時は大抵、文官とか慎重派は策が無くワイワイガヤガ ヤ騒ぎ出し、武官とか強硬派はとにかく戦うと言い出すのが定番だ。ご多分に漏れず、彼らも定番の議 論に明け暮れるのみだ。では実際、こーいう危機的状態の折はどうすれば一番の解決策だろうか。それ と、ついでだからこのライの世界での城(絵敵には一個の星だが)攻めの定義についても語ろう。これ が現実の世界なれば当然籠城だ。強固の城に立てこもり、城壁を文字通り盾にして耐える。それに対し て、有効な攻城能力のない攻め側は何が何でも城壁にたどり着き、数の力で圧倒するか、兵糧攻めとか で長期包囲策に出るかである。長期包囲に及べば立て籠もる方も大変だが攻める側にしても兵糧不足や 病気の蔓延があっても不思議ではない。それによって包囲が解けるのを待つのも一つの策であろう。さ て、話をライの世界に戻すと、実際には城といえども只の石や木で造られた建築物だ。宇宙を戦艦が飛 んでるのにえらい科学力のギャップと思われるが、もし宇宙戦艦に対応した城となったらデス・スター の様なモノになってしまう。それを出したら、世界観はぶち壊しである。脳味噌の足りないアニメのス タッフは平気でそーいうのを出してくれたが、あれは彼らの発想の貧弱さと、こんなもんで良いだろう と言う投げやりさ加減を露呈しただけだ。ライの世界は、設定の徹底さが大事なのだ。どーいうことか と言うと、戦艦のシーンは徹底して戦艦として描く。宇宙とか何だとか考えない。波もあれば、煙突か ら煤煙も出る。艦も動揺し、大風を浴びれば、激しく揺らぐ。戦闘シーンになれば水柱が上がり、炎上 して沈没する。つまり、世界観から、宇宙という要素を徹底的に排除することなのだ。当然城攻めは、 古代の中国とかと全く同じやり方だ。大砲もあることはあるが、これははっきり言って画面上に爆発と かが欲しかったための演出的存在に過ぎない。従って、上空にいる戦艦からの砲撃もない。そんなこと したら、城塞都市なんか跡形もなく消えてしまうではないか。当然戦艦も降りてこない。本当にそのま ま三国志の城攻めでやるのだ。もっとも、こーいう世界観が決まったのも骸羅討伐戦の頃であって、ラ イの世界も初期は戦艦が降下してきたり、ネームの中で艦砲射撃があったとか言ってたけどね。私自身、 ライという世界の戦闘イメージを決めかねていたのも事実だ。逆に決めちゃってからは本当に徹底した けどね。 さて、世界観はともかく、どーすればこの危機を脱することが出来るだろうか?純戦闘員の数では1/ 30ぐらいの大差があろう。例えどんなに堅固な要塞でもこの数の差では、籠城は苦しい。孟閣が戦い を挑んだのも正しい選択だったと思う。彼とて劣勢な戦力で、西羌軍を壊滅できるとは思っていない。 叩いて、さっと引っ込んで守る、この戦法に徹したかったのである。有効打を浴びせておいて、コーナ ーに下がって、味方砲台の援護の下、ゲリラ戦に持ち込む。そして敵の士気が下がったり厭戦気分が蔓 延したところで三楽斎とかの能弁の士を、送り込んで、説き伏せ、撤退に追い込む、これが孟閣の考え た策ではなかったか。 ただ、彼の策には一つの欠点がある。後詰めを置いとかなかったことだ。後詰めとは城外にある、援軍 のことで、古代でもあらかじめ味方兵力を割いて、後方に潜ませておくか、近くの城からの援軍とかが これに当たる。この後詰めがあってこそ、攻城軍を挟み撃ちにして、敗退させることが出来るのだ。 なればこの斉王都の場合の後詰めは?一つは近くの有力な都市に駐屯している守備隊であろう。近くに は武王都もあるし、何と言っても五丈の中核だ。各地の守備隊を集めたら何とか50万近くにはなった かもしれない。もう一つは三楽斎も提案した、南天戦線からの一部軍勢の撤収だ。これまた、大した数 ではないだろうが、何せ精鋭である。実際の数以上の戦力になったであろう。だが彼はそれらを行わな かった。なぜか、一つは各地の守備隊を集め、それを後詰めの軍として率いる才を持つ将の不足だろう。 地方の守備隊だ、とても精鋭とは言えないだろうし、後方で養生している傷病兵、もしくは老兵だろう。 人員に対して艦艇も不足していたに違いない。そのような雑軍を率いるのはかなりの練達の将軍でも難 しいだろう。勝手バラバラに攻撃して、混乱を極めるだけかもしれない。なれば彼らには要衝を固めて もらうのが一番だ。孟閣はそれで、地方守備隊の召集はあきらめた。なれば、遠征軍の呼び返しだが、 いくら精鋭といえども数的不利を補うには二個軍団の帰還を待たなくてはならない。有利に戦況を進め ているとは言え、戦場から二個軍団も引っこ抜くことを考えると、少し前まで、五丈軍の要でもあった、 孟閣にとってはそれは容認できないことだったんだろう。それに西羌軍の反乱となれば、遠征軍に帯同 している、公旦の軍の動きも気になる。もし、秦宮括に応じて反旗を翻していても、遠征軍そのものが、 微動だにしなければ武器を使わずとも、押さえ込める。だが軍の一部撤退となれば、それこそ好機到来 と公旦軍にきっかけを与えることにもなろう。雷の右腕を自認している孟閣にとって、自分たちの不手 際で雷に迷惑をかけるのだけは避けたい、この想いが頭を支配していたと言っても過言ではあるまい。 もう一つ大事な要素として、孟閣の意地もあろう。今回腰痛という、老いを感じさせる身体の衰えによ って、置いてけぼりを食ってしまった彼である。誰よりも常に雷の側にあった宿将にとって、これほど 辛いモノもあるまい。例え圧倒的に不利な数適条件とはいえ、戦略的に格下である西羌軍など自分の力 で一泡吹かせたいと思うのも無理もないだろう。こうして彼は出陣していく。 西羌軍も西羌軍で混乱している。彼らはまだ正面切って、五丈軍と事を構えたくなかったのだ。その想 いは総大将、秦宮括が充分身に浸みている経験からも来ている。彼は今更ながら、自分が何を竜王と約 束し、その裏切りがどんなに重いか気付いたようだ。皇太后を始め、自分の一族に押されたとは言え、 全幅の信頼を寄せ、故にその全軍を南征に振り向けられた竜王との同盟関係を破棄したのだ。しかも留 守を襲うという、人が一番怒りそうな戦いを仕掛けているのだった。それを突いた公叔の言葉は当然で ある。今更考え直しても、謀反の件が五丈に伝わったからには、もう引くことが出来ないのだ。公叔と しても必死である。彼への信も他の重臣に負けず劣らず厚かったのだ。だが彼にはもう五丈への未練は 無い。これ以上の高望みをするには、君主を変えるしかないと決めているのだ。そして今彼の懐には御 しやすい猛将と、大軍団がある。最早やるしかないのだ。ここで、公叔に紫紋らを人質にとることを提 言させておく。これは昔、羅候が、正宗に対して行った、クーデターと発想は近い。羅候は、虎丸を、 秦宮括は紫紋や、梵天丸を切り札に使おうと考えたのだ。もっとも理由付けはともかく、ここでこう振 っとかないと、城兵共々、紫紋らも皆殺しになってしまう。今回の攻城戦の目的は三人の拉致であるこ とを強く出しておこう。 華玉らが、南征中の五丈軍に使者を出したが、これも、今後の前振り。時間の省略とでも言うべきか、 なるべく早く雷達が斉王都の変事に気付いてもらわなくては困るのだ。ニュースが伝わるのを待っていたの では手遅れにもなる。雷ではなくて、作者の今後のストーリーの進行上の問題だが。 孟閣軍が西羌軍と激突する。絶望的な戦力差故に白兵戦は出来なかった。戦場が固定化する白兵戦では、 どう、上手くごまかしても読者の目から見て、何で西羌軍が押されるか、分からないだろう。いくら質 でカバーするからと言っても一対三ぐらいの戦力差ぐらいじゃなければ無理もある。そこで、技量の差 が絶対にモノを言う砲撃戦とした。日露戦争時、日本海海戦の勝利の立て役者、秋山参謀はこう言った。 「百発百中の砲一門は百発一中の砲百門に勝る」と。正しく質が量を凌駕するとのことであろう。もっ とも日本海軍はこの訓示を、どう取り違えたか、精神論の方に走ってしまった。訓練の練度より、精神 が大事だとね。猛練習したいけど、弾は節約、なれば精神を鍛えましょうって感じで… それはさておき、後方部隊とはいえ、さすがに首都防衛軍、精鋭の名に恥じぬ高練度を見せつけてくれた。 雷の世界では演出的に砲身を振り上げ、仰角をかけて砲撃しているが、本当は砲身をほぼ水平にして撃つ、 直接照準だ。これならば目標の移動速度を考慮してその未来位置に向かって発砲すれば当たることになる。 勿論目標までの到達時間も、大事な要素だが、初速の早い長砲身砲であり、しかも交戦距離が3000〜 6000メートルぐらいなら、よく訓練されている砲手なら、さほど問題にもならないだろう。後、大事なの は指揮官、勿論、ここでは孟閣だが、彼の敵情の掌握力だろう。敵がどのような陣形で、どの方向に動き、 味方のどこを攻めようとしているか、そしてそれに対して、こちらはどこに火力を集中すればいいのかを瞬 時に判断する力だ。これはもう、長年雷の副官を務め、軍人としては最高位でもある大将軍の地位にあり、 しかも、師真らによる教示を完全に我がモノにしている、ベテラン指揮官の独り舞台だろう。しかも、彼の 指揮下で戦う部隊は正に手足の如く働いてくれる精鋭だ。彼が敵の弱点となる要所を示せばすかさず有効弾 を撃ち込めれる頼もしい連中だ。戦いは予想通り、一方的になる。混乱を極める西羌の大群は、小回りが利 く孟閣軍の的確な攻撃に手も足も出ない。頼みの帝虎級戦艦も空しく味方を粉砕するのみだ。本来なら、艦 隊の前方に単艦で進出し、分厚い装甲で敵の砲撃を一手に引き受けつつ、その強大な火力で敵を粉砕する、 敵がかわして、後方の本隊に向かえば、反転して、味方と挟み撃ちに、敵が帝虎級戦艦に集中すれば、本隊 が帝虎もろとも囲んでしまう。そのような帝虎の利点を理解せず、ただ強大だからと自分らの座乗する旗艦 として、本隊の中心に位置したことがすでに帝虎の威力を半減させていると言ってもいいだろう。本当は蹄 庖ら南天幹部が残っていた方が良かったのだが、帝虎級戦艦を渡すだけで十分だと思ったのか、そこまで細 かく目配りを必要と感じなかったのか、誰一人残ってはいなかったようだ。結局、共同作戦とは名ばかりで、 各国とも自分の好きなように戦いたかっただけなのである。 キリキリ舞いしている西羌軍に対して、ほとんど勝利を確信していた孟閣が座乗する旗艦に立て続けに被弾 した。正しくこれが運命の一弾となったのである。 ここらで、制作日記の方は一段落、あんまし書きたくはないけど、ライの制作にも大きな影響がある、不景 気な話をしよう。 まーた、ページが減らされるのである。佐藤氏の担当だった時代に50ページ代であったのがあれよあれよ という間に30ページ代に。まったくをもって面白くない話だ。理由はGAOが赤字のため。雑誌が赤なの はどの雑誌も似たり寄ったりの話だが、それをカバーする単行本がちっとも売れないそうだ。いわゆる採算 割れのラインである最低部数をクリアーしないコミックスがゴロゴロしてるって話だ。もともと、部署毎の 独立採算制と言うことになり、コミックス部門を書籍から編集部に移したりもしたが、肝心のそのコミック スが売れないんじゃ、どうしょうもない。勿論作家にも当然責任もあるのだが、それよりも、素人目に見て GAOが出している単行本の中で、買いたいという本があるかどうかだ。矢上氏、吉富氏など、メディア展 開がなったモノはともかく、バンダイ絡みや、ゲーム絡みの安易なコミックス展開モノの単行本を買うやつ がいるのか?実力も伴わない、何でこんな奴がって作品が多すぎるぞ。読者は馬鹿ではない。いくら見てい るアニメ、やってるゲームでも、クソの様な絵や話では、絶対買わない。ましてや、その作品が気に入って たらね。後、実力はあるのに、全く別土俵の作品を書かされている作家さんも多いこと。これも作品と、作 家の特性を見抜けない、編集部だからであろう。このような安易なメディア展開をスポーン以来、延々と続 けるおえらさんにも困ったもんだ。方針の失敗のせいで雑誌が薄くなり、各作家の持ちページも減らされる、 強いては収入が減らされることになるのだ。その前に自分たちの給料を減らしたら?これで忘年会なんかし ゃあしゃあと開いたら、頭からビールぶっかけちゃおうっと。 この話を持ってきた編集長は「でも今月はちょっと売り上げが伸びたんですよ」と宣われた。おいおい、それはこ げどんぼのおかげだろ。政府の景気対策みたいに、一時的なカンフル剤ばっかだな。他社で人気がある作家 を連れてくるこの安易さ…もうちょっと根本的なもんじゃないのかい?もっとも、首もかかってるだろうか ら、とにかく数字が必要なんだけどさ。 どうやら、来年の3月までが山場だそうな。もし、売り上げが回復しなかったら…ここまで来て、ライは、 住んでたお家を無くすのであった。 よく考えると。3月までと言うのは例の臣士のアニメがやってる間って事じゃないか?結局はアニメ頼み、 サイバスターみたいなクソ作画のアニメでも取ってくるのが分かるような気がするな。 | |
ライ製作日記に戻る |