2000 GAO5月号
ライ 第119話


またまた、長く制作日記の方が、手付かずになってしまってるな。新連載とかも始まったし、夏コミとかもあるから、どうしても、 ホームページの方が疎かになってしまう。プロの作家として、商業誌を最優先するのは当然であるが、同人誌も、ホームページも 真鍋譲治の名で、作っている物なんで、正直優先順位は付けられないのだ。けど、三者を同時に進めるのは至難の業。昔、未だ、 何をやっても疲れ知らずの頃ならまだしも、慢性的な疲労と、何かする度に充分な休息が必要な現況を考えると、正に「時は金ナリ!」 と言うことだな。一日24時間、上手く使わないと、何もかも、中途半端になってしまいそうだ。

とか何とか言ってる間に、ガンダマンと東映マンガ祭りに行ってしまうだらしない真鍋であった。

またまたGAOの現況から始まってしまうが、この間編集長と飲んだので、色んな話を聞いてきた。勿論編集長はこのサイトを知ってるので、 いわば公開してもかまわない情報だし、もしかしたら、ちょこっと脚色しているのかも知れないが、2.3ここに書いておこう。良い話も あれば、悪い話もある。落胆と希望、両者入り交じった情報だ。 最初は、少しずつだがブロッコリーの肩入れもあって、部数を伸ばしてきた GAOであるがこげトンボ効果もやや息切れ状態で、とうとう6月売りで伸びが止まってしまったそうな。7月売りのGAOで、作家全員テレ カプレゼントで、またグラフの右肩上がりを期待しているそうだが、正直「プレゼントで〜?」と言うのがこっちの心境だ。そもそもテレカな んか、毎回プレゼントにすればいいと思ってたので、そーいうモノで、果たして効果があるのかどうか...あと、これはこの飲み会で話は出 たわけではないんだが、漸く、バンダイとの妙な関係が切れたようだ。そもそもメディア.ワークス立ち上げ時に、当時の角川歴彦社長との、 個人的付き合いから、船出したばかりの新会社を色んな意味で助けてきたバンダイだが(ライがアニメになったのもバンダイという大物スポン サーが付いたおかげである)その弊害というか、押しつけられた企画のようなモノが大量にGAOに流れてきて、誌面を席巻してしまった。又、 少なからずの人間もバンダイから流入してきたのだ。(しかも管理職として)だが、時代も流れ、メディア.ワークスが、殆ど角川の一事業部 と化してしまってから、徐々にその影響も無くなりつつあるようだ。おかげで、押しつけのアニメのコミック化とかも無くなってきたのは良い ことだろう。色々事情もあるだろうし、弱小会社が生き残るためとは言え、やっぱり、雑誌は独創的でなければならないと思うが..それがオ リジナリティであり、個性というモノだろう。 だがバンダイからの影響を脱出しつつあるGAOではあるが、今度はブロッコリーと急接近だ。 先に書いたバンダイからの人材はブロッコリーや、他数社との合弁オモチャ会社に吸収され、ライのアニメ放映時にGAOの編集長だった加藤 氏(バンダイ出身)が社長に納まったようだ。もう出来てしばらく経つが、何か作ったとか言う話は聞かないなぁ。最後だが、現編集長の方針 として、深夜アニメとかのメディア展開は止めにしたそうな。ビデオやLDを売るためだけの放映であっては、短期的はともかく、長期的には 利がないと考えたみたいだね。今のGAOはこの短期的と長期的の方針の調整が難しくなっているように思う。結果を出さなくてはならず、し かし将来を見据えた作家、作品作りも必要、けど、将来の展望は読めず、オマケに出版不況と来た。要は手駒は少なく背水の陣でもあり、当面 の敵と戦いながら、長期的な国家作りをやってるみたいなもんだ。 それにしてもブロッコリーとの関係が深くなるに従って、「プニ系」(と言うのか?)マンガが増えちゃったね。別段嫌いではないが、さすが にこの環境では、ライはおろか、次の新連載と考えている作品もやりにくいなぁ。ナチものだしなぁ。

変な出足になってしまったが、この119話から数ヶ月を掛けて、結構ハードな話が続く。中心人物は南天大将軍・姜子昌だ。これから 続く悲劇は、彼の性格と身の処し方、勿論戦略家としての発想含めて全てこの男一人に引きずられる事となる。

この後展開される姜子昌の策だが、簡単に言えば月落としである。よくスペースオペラ、レンズマンとかによくある、小惑星をそのまま、ミサ イル代わりにぶつけるってヤツだ。それを、ライの世界観で処理したものが、姜子昌の策である。とは言え、どう処理しょうもないと言えばそ れまでだが....

姜子昌の最後の秘策としての月落としだが、南天一の知将の最後の舞台として、当然ながら様々な案があった。対羅候戦は、最初から、大 部隊を率いての会戦は三回と決めていた。すなわち初の両雄激突でもあり、歴史の転換点にもなった、六紋海の会戦、そして、南天での最初の 激突である北京沖での会戦、そして、羅候滅亡でもあり、天下統一の最終戦でもある最後の会戦とだ。姜子昌がその最後の会戦で、指揮を執っ ても良いが、そうすると、主君、軍師、双方が同じ戦いで死ぬと言うことにもなり、一寸物足りないと言うこともあるし、ましてや、その戦いの 中で羅候を庇って死ぬと言うこと何かはしたくない(アニメではやりやがったが..)。以外と、日本人は親友は友を守って盾になって死ぬと いうのを好むし、私自身もアウトランダーズ以来、よくそのパターンを描いてきた。でも、それは、大抵、一個人として守ったのであり、しか も余りにも「親友は友を守って盾となる」と言う原則というかパターンの直接的すぎる表現だろう。これはこれで良いのだが、仮にも彼、姜子 昌は、戦略家であり、部下の殆どを失ったとは言え、大都督・大将軍なのだ。例えば、雷を雲海や項武が盾となって、敵の弓矢から守るのとは 訳が違うと思う。姜子昌にはもっと大きい意味での主君を守る戦いをさせてみたかったのだ。とは言え、戦力はない。ではどうすればいいのか.. 究極の目的である羅候の天下統一には何が何でも五丈軍を壊滅させなくてはならない。戦力がないのだから、会戦を挑むわけにもいかない。五 丈の牽制役でもあった西羌は連絡の不味さも手伝って、共同戦線も張れぬ間に勝手に進撃して勝手に亡んでしまった。南天緒部族を総決起させ るという根回しの必要な策も五丈にガッチリと固められつつあるこの時期には、現在の戦況もあって実現の可能性は薄い。つまり戦力の無い、 軍事組織がやる最後の手段を姜子昌は取らざるを得なかった。それはテロリズム...雷暗殺だった。

暗殺というのは、一個人を殺すことだが、全権力が集中している王を殺すこととなると、立派な戦術の一つにもなる。昨今のテロ組織がやって る、政治的宣伝のためや、組織の勢力誇示の暗殺とは全く違うレベルである。強いて言えば、国家的な暗殺、昔CIAが南米の独裁者を殺した り、見事な失敗でお笑い種となったキューバのカストロ暗殺、古くはヒトラーや、カエサルの暗殺の話なのがそれだろう。一個人を殺すことで、 その人間が所属している集団、国家を壊滅させることが出来る相手がいれば成り立つ戦術である。五丈は南天のように、富も権力も全て羅候只 一人に集中しているオリエント的な完全な専制君主国家ではないが(例えば兵権なんかは師真なんかと共有している部分もある。南天では大将 軍と言えども自由に動かせる兵はない、全て羅候の私兵と言うことになる)やはり、全権力が基本的には雷自身に集中しているだろうし、雷自 身が持つカリスマ的なモノで形を成している国家である。未だ建国して10年足らず、とても国家として成熟するにはなっておらず、又、こう 言う時期だから逆に都合の言い体制でもあった。もし、雷を殺せばどうなっただろう。先月号の雷の帰還時の騒ぎを見ても、南天の緒部族は五 丈の軍事力ではなく、雷自身を恐れているのが分かる。これは当然、五丈の枠から離れるだろう。又、戦術的に見ても将を失った軍は直ちに撤 退するというのが兵法の鉄則である。副官や、息子が跡を継いで、そのまま戦いを継続したことは希である。五丈軍も間違いなく撤収しただろ う。これだけでも、充分、その効果を発揮したと言えるが、さらに幼子の梵天丸を擁して復興した五丈を倒すことも可能である。それが姜子昌 の最終目的だ。では何故それが可能なのか?歴史上、このように、幼子を担ぎ上げて結局は失敗するのは何故か。兵士も、将も健在、又師真と いう軍師もいるのにだ。それは、自分達の活躍を見て、公平な評価をしてくれる者がいなくなるからだろう。末端兵士はともかく、それを統べ ている将達は別に金のために戦っているわけではないが、名誉は掛かっている。君主にとって何よりも大事な仕事はその評価をしてやることだ。 自分達の流した汗と血の評価を公平にしてくれるから、男達は戦うのだ。誰が、功績を認めてくれない男の許で戦うことが出来るだろうか。幼 子の新帝には土台無理な話である。それならば師真が居るではないかと言うことになるが、彼も今まで軍師として部下を評価はしていたが、最 終決断者ではなく、彼も又、雷によって、評価される側の人間であったのだ。その評価される側、つまり自分達と同じ立場であったわけで、そ の人間に主君が居ない(幼くて、判断能力がない)からと言って、自分達の功績を決めることが出来るとは誰も思わない訳である。

幼帝を擁して戦ったと言えば、三国志の諸葛亮孔明が有名であるが、一説によると、もし先帝劉備が生きていたら、孔明の北伐は成功したと言う。 事実、孔明の指揮の間は部下の造反とかが少なからずあるのだ。あの天才軍師で、又完璧な組織管理者と言えども、軍を一枚岩には出来なかっ たと言うことが、軍師と主君の差であろう。知的才能はここでは関係ないのだ。

因みに、ライの世界は中国的な思想で描いているわけだが、あちらの主君と臣下との関係は、日本とは違い実に何というか..簡単に言えば傭 兵のような関係であったと言えよう。だから、主君を代え、国を転々とする者も多かったし、主君は頼むに足らずと感じたら、さっさとその国 を去るというようなものだ。変な話、古代中国では忠臣蔵は起こらないと言っても良いのかも知れない。アレはあくまでも上に忠誠を尽くすこ とが美であるという、日本的な発想から起こったものであろう。別にこの考えがいけないとは思わないが、一寸窮屈でもある。今でも会社一筋 とか言う日本人はやはりここらからの血を受け継いじゃってるんだろうね。 

ああ、又話が脱線した。要は、姜子昌は、今当面、羅候の置かれている立場を救うと言う緊急かつ、直接的な利害もさることながら、もっと長期 的にも見据えた上での雷暗殺であったのだ。

さて、暗殺方法だが色々考えたがそのうちの幾つかを紹介してみよう。まずは一番簡単な、コマンド部隊を率いての五丈本陣への切り込みって 形だ。姜子昌そのものもかなりの剣の使い手でもあり、もっとらしい戦いだが、やはり、知将の策としては直接過ぎる。又、失敗して、後を飛 竜に任すというこの後の展開が不可能だろう。それでこの案は早々と捨てた。その次に考えたのが、空城の計だ。要は空き城に敵を入れて、火 を掛けたり、兵を潜ませてたりするヤツだ。ライ的スケールを考えて、星中の火山とかに爆薬を仕掛け、それを爆破、城ごと溶岩に飲ませ、又、 最終的には大王理そのものを破壊してしまう案である。これは最後まで、月落としの案の争った考えである。只最終的に月落としに軍配が上が ったのは、空城の計よりも伏兵を谷に潜ませて、下を通る軍勢に上から岩を落とすと言うイメージを、ライの世界で処理してみたいと思ったか らだ。今まで、火計、水攻めという自然を使う策をやってきたし、絵的にも岩の代わりに月が落ちてくるのも面白いと思ったからだ。一大スペ クタルになるだろう。スペクタルなら、火山爆破も充分絵になるが、考えてみると、月が落ちてくると同時に本星の方にも当然地殻変動などの 変化があるわけで、その中で充分描けると思ったからだ。とにかく、今まで大きい戦いを、軍事的なことより、自然を生かして戦ってきたライ バル師真の戦法に対抗する意味もあったので、最終的に、この月落としに落ち着いた。後が作画能力だけである.......

実は以前、アウトランダーズで月落としは経験済みである。ただ今回はその月落としからの脱出がメインな訳で、その分、色々天変地異的なス ペクタルシーンを描かねばなるまい。本来星と星が接近すると、どちらか、もしくは両方が互いに重力で、途中で砕けるらしい。けど、それで は面白くない。月が大王理にめり込むところが描きたい、そう、あの天才バカボンのオープニングの様に!一寸ご年輩の人なら覚えているだろ う。多分元祖の方だと思うが、「西から昇ったお日様がー」という、歌詞の間、バカボンのパパが高い山の上にふんぞり返っていて、回り込み をしながら、カットバックで地球に月がめり込んでいくシーンを。子供ながらにあの作画が大好きなのだ。いつかやりたいと思っていた。今回 それをやるのだ!

このバカボンのオープニングだけではなく、参考になりそうなアニメや、特撮を頭の中に並べてみた。昨今、あんまし宇宙モノのアニメはない ので、80年代のアニメがメインになるが、それでも星と星の激突というのは数えるほどしかない。それでも、ぶつからなくても、星が爆発す るシーンや天変地異ならそれなりにあったので、LDなんかで持っているモノは結構見てみる。しかし、そのまま全部通してみたりして、貴重 な作画時間を浪費することにもなってしまったが..

一番参考になったのは、「TV版・宇宙海賊キャプテンハーロック」だ。話数は一寸ど忘れしたが多分38話ぐらいだろうか..銀河子守唄と か言うサブタイトルが付いていたような。この話は、二つの星がアルカディア号に接近して、押しつぶそうとしたのだが、その中をまんまとア ルカディア号は脱出に成功、二つの星は砕け散ってしまうと言うストーリーだ。作画は当然今のレベルで見ると、何とも拙いが、演出とかに見 るべき所があり、相当に参考になった。アルカディア号の後方で星と星が接触して、徐々に火に包まれていくところはそのまま、真似したくら いだ。ああ、でも、動画は良いなぁ。一枚絵で、コレだけのことを見せていくのは、至難の業であり、アウトランダーズ時より、少しはマシに なったと思ってる、自分の画力でも、殆ど手に負えないのが現実だ..

天変地異となると何が必要だろうか。まずは地震だろう。そして、地割れに火山の噴火、海には津波に、空には竜巻や雷鳴、更に上から隕石か? スペクタルシーンのメインは次の回なので、今回はその序調となる。星と星の重力の関係が変化して、大気の流れが大きく変わるだろう。当然 空は暗く、雲が飛ぶように飛んでいく。不気味な地響きが続き、地割れがあちこちに起きる..この辺りであろう。正直、この世界の終わりかと 思わせる、破滅への序章を上手く表現できたとは思っていない。もっと、大ゴマで大王理に俯瞰とかを見せるべきであった。ページの都合とは いえ、雰囲気を阻害してしまった。もっと、次なる大異変に対しての盛り上げをするべきであった。ここいらは、今月末に取り掛かる24巻の 書き足し分として、考えておかなければならないだろう。

話は前後するが、月を落とすにしろ、どうやって、と言うのがある。ロケットでも作って、動かすとか、鎖で引っ張るとか変な案も考えたが、結 局は、互いの重力作用と言うことにした。つまり、小さい弟星を中心にして互いに本星と、それとは余り大きさの変わらない、兄星が回っている という、一寸屁理屈的な設定を考えてしまった。この考えはアニメのライの中でも姜子昌の死ぬ回に私が考えて、脚本の中に入れてもらったモノだ。 苦しいかも知れないがロケット噴射よりかはマシだろう。又弟星はごく小さいと言うことにして、火薬か何かを充填すれば爆発させる事も可とした。 姜子昌が後方に残されていた間にやっていたと言えば、時間的な説明にもなろうか。

降り注ぐ、弟星の破片から、大王理の雷達を守り、この次の回の脱出を助ける役に姚文を抜擢した。雷の宿将だが、性格が地味であり、騒がしい鐘 士元や項武と比べて、目立たない存在ではある彼だが、実はその慎重な性格、又篤実性から、雷に重宝されている武将である。孟閣亡き後、最高齢 の武将でもあり、そーいう意味では武将の中の影のリーダーと言っても差し支えあるまい。ここは一つ、彼の活躍を描いて、目立って欲しいモノだ。

師真は虫の鳴き声が聞こえなくなることで、何となく異変に気付くが、雷は夢の中に出てきた紫紋の呼びかけで目覚めるという考えもあったが、一寸 ベタベタなんで、躊躇してしまった。今考えると、それくらいいかにもって言う方が良いかなっと思っている。コレも単行本時の描き足しかな?



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